「技術」「人文知識・国際業務」等は、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う」活動です。
当該外国人が「本邦の公私の機関」たる日本法人との契約に基づいて行う場合が「技術」「人文知識・国際業務」等に該当し得ることに異論はありません。 では、当該外国人が勤務している外国法人と当該外国人が派遣されて職務を行う日本法人との契約に基づいて行う場合(当該外国人と日本法人との間に契約はなし)は、「人文知識・国際業務」「技術」等に該当し得るのでしょうか? 法文上は該当し得ると解釈するのが自然と思われます。 先日、東京入国管理局にて確認したところ、「該当し得る」との回答を得ました。 但し、外国法人と日本法人との契約書中、当該外国人を特定すること、当該外国人に対する報酬支払うを日本法人が行うこと、が条件である旨指示されました。 この点に関する通達も最近出ているようなので情報公開請求する予定です。 なお、平成16年2月17日法務省入国管理局入国在留課事務連絡は、下記のとおりの論理で日本に支店・支社を有する外国法人自体が「本邦の公私の機関」であるとし、日本の支店・支社に勤務する当該外国人と本店たる外国法人との契約も「本邦の公私の機関との契約」に該当するとします。 ①「本邦の公私の機関」には、外国法人の支店、支社等も含まれる。 ②契約の主体となり得るのは、自然人又は法人格を有する団体に限られる。 ③「本邦の公私の機関」は、自然人又は法人格を有する団体を意味する。 ④外国法人の支店、支社等については、外国法人が「本邦の公私の機関」となる。 ⑤当該外国法人は、「外国の公私の機関」であると同時に「本邦の公私の機関」でもある。 すなわち、この事務連絡は、『外国法人との契約に基づいて「技術」又は「人文知識・国際業務」の在留資格に係る活動を行う外国人に対して在留資格を決定するに際しては、本邦に設置された本店、支店等との間に新たな雇用契約が締結されていることを求める必要はなく、「企業内転勤」の在留資格における「公私の機関」と同様に、外国にある本店、支店等において行った外国法人との契約をもって契約に基づくものとして取り扱うこととなる。』としています。 この解釈、論理構成には非常な疑問を感じます。 「本邦の公私の機関」に法人格を求めながら、外国法人の支店、支社等も「本邦の公私の機関」に該当するとし、外国法人の支店、支社等には、法人格がないので、外国法人そのものが「本邦の公私の機関」になる? 意味不明です。。。 当該外国人と日本法人との間に契約がない場合ですが、 日本法人で勤務する場合であれば、日本法人と外国法人との契約をもって、「本邦の公私の機関との契約」があるとすることは可能です。 しかし、外国法人の支店、駐在員事務所で勤務する場合は、「本邦の公私の機関との契約」があるとすることはできないのではないでしょうか(「企業内転勤」は可能だが、「人文知識・国際業務」は不可能)。 ※しかし、昨年、外国法人の駐在員事務所に勤務する外国人につき、東京入国管理局に「人文知識・国際業務」の在留資格認定証明書交付申請を行い(直近在職期間不足で「企業内転勤」不可能な事案)、交付されました。 【参考資料】 市場開放問題苦情処理推進会議 第3回報告書 「基準・認証制度等に係る市場開放問題についての意見」 http://www5.cao.go.jp/access/japan/oto/reports/1996.html#2_6 平成8年3月18日市場開放問題苦情処理推進会議 以下上記報告書より引用 ======================= 本報告書は、「基準・認証制度等に係る市場開放問題への対応」(平成5年5月27日、市場開放問題苦情処理推進本部決定)等に基づき、外国人事業者等からの問題提起を受け、我が国の基準・認証制度等に関する問題の所在を明確化し、必要な対応を意見として取りまとめたものである。 市場開放問題苦情処理対策本部におかれては、速やかに本報告書を最大限尊重した対応を決定しそれに基づく措置を取られたい。 6-(3) 上陸審査基準等の見直し ○ 問題提起者:駐日フランス大使館 ○ 所管省庁:法務省 ○ 問題の背景 (1) 我が国に入国・在留している外国人は、出入国管理及び難民認定法に定める在留資格のいずれか一つを付与されており、個々の在留資格に応じてどういう外国人が該当するか、あるいはどういう活動を行うことができるのかを法令により明確に定めている。一般的に企業が我が国に進出するためには、初めに日本国内に事務所を開設する方法があるが、それらの事務所において外国人が就労しようとする場合には「投資・経営」、「研究」、「技術」、「人文知識・国際業務」、「企業内転勤」等の在留資格が考えられる。 1)「投資・経営」の在留資格が付与されるためには、事業所として使用する施設が本邦に確保され、かつ2名以上の常勤職員が従事している事業の経営又は管理に従事すること等が前提となっている。 2)「研究」、「技術」、「人文知識・国際業務」の在留資格が付与されるためには、本邦の公私の機関との契約に基づいて就労すること等が前提であり、例えば外国本社との契約に基づく就労は認められない。 3)「企業内転勤」の在留資格が付与されるためには、外国にある本社、支社等において1年以上在籍している者が我が国の本社、支社に転勤の形態により就労すること等が前提となっている。 上記の資格においては、外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事する場合には月額25万円以上の、その他の業務に従事する場合には日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受ける必要がある。 (2) なお、「短期滞在」の在留資格が付与された場合には、本邦に短期間滞在して行う観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習又は会合への参加、業務連絡その他これらに類する活動が可能である。この中では、外国にある会社等の職員が本国から報酬を受けつつ、契約交渉、取引の立会、調印、本邦にある本店、支店営業所等との連絡等の活動を行うことは認められるが、本邦で収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動は認められない。また、滞在期間は90日間となっている。 (3) 我が国に在留中の外国人は、その有する在留資格の変更を受けることができる。この場合、法務大臣は在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。 (参考) 対日投資促進のため、平成5年に通産省等の支援により「(株)対日投資サポートサービス(FIND)」が開設された。また同年、赤坂ツインタワービル内に「ビジネスサポートセンター」が開設され、ここでは対日輸出等の活動の拠点となるオフィスの提供、コンサルテーション、ビジネスセミナーや研修、商談の場の提供等を行っている。 ○ 問題提起内容 フランスの有名な会社が大阪に代表事務所を開こうとした。そこで、技術面にも言語面にも精通した在日フランス人を代表者に任命したところ、そのフランス人がそれまで有していた在留資格が切れ、「人文知識・国際業務」への在留資格の変更が認められなかったために、日本に在留できなくなった。 一旦帰国したフランス人は、再来日に際して「技術」の在留資格で申請したところ、また認められなかった。 理由は、本件申請がフランスにある本社との契約に基づくものであることから、「技術」、「人文知識・国際業務」の在留資格を付与するための要件である「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う活動」とは認められなかったためである。 このような在留資格の認定に係る問題が、フランスの企業から大使館へ出されることは多い。事務所の開設は日本への投資の第一歩であり、このようなケースでの在留資格の審査内容、基準等については、現行法の解釈により出来る限り柔軟に対応すべきである。 ○ 検討結果 我が国は今日では対日投資を拡大することが基本的な方針となっており、対日投資に対する種々の阻害要因を撤廃して行く必要がある。 所管省によれば「短期滞在」の在留資格を得て我が国に在留した上で代表事務所を開設することは可能とのことであるが、その後の在留資格変更はやむを得ない特別な事情に基づくものに限られること、「短期滞在」の在留期間は90日間に限られること、本邦で報酬を得る活動ができないこと等の制約がある。 このため、本件のように外国人が我が国に新たに企業を設立しようとする場合に、その代表者等に在留資格を与える、又は、在留資格の変更を認めることが困難という現状は改めるべきである。就労を目的とする外国人の受入れについて政策的に一定の制限を設けることは必要とはいえ、在留資格該当性及び上陸審査基準をより透明性の高いものとするため、規定の解釈等を明確に示すべきである。また、本件のように、外国人が外国企業との契約に基づいて、健全な経済活動を行うことを目的として、日本国内に新たに事務所等を開設しようとする際に、現行法令の運用の見直し等により、在留資格を与える(在留資格の変更を認める)方向で改善策を講ずるべきである。 基準・認証制度等に係る市場開放問題についての対応 http://www5.cao.go.jp/access/japan/oto/measures/1996.html 平成8年3月26日 市場開放問題苦情処理対策本部 「基準・認証制度等に係る市場開放問題についての意見」(平成8年3月18日、市場開放問題苦情処理推進会議第3回報告書)を最大限尊重し、市場アクセスの一層の改善に資するため、以下の対応を取る。 「外国人が我が国に入国・在留する際の在留資格該当性及び上陸審査基準をより透明性の高いものとするため、規定の解釈等を明確に示す。また、外国人が外国企業との契約に基づいて、健全な経済活動を行うことを目的として、日本国内に新たに事務所等を開設しようとする際に、現行法令の運用の見直し等により、当該外国人に在留資格を付与する(在留資格の変更を認める)方向で改善策を講ずる。」
by kan-officekan
| 2007-07-15 00:14
| 就労一般
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市販の書籍ではほとんど触れられていない、入管法解釈の最前線に言及している関係で、前後の記事間で内容にズレが生じることがあります。ご了承ください。 by kan-officekan ブログパーツ
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